少し前ですが、勝間和代氏の『会社に人生を預けるな』を読了しました。
会社に人生を預けるな
内容はリスクリテラシーの必要性を説いた本であり、タイトルから想像した「終身雇用制度」とか「雇用の流動性」にまつわる話そのものは大体3分の1くらいかな、との印象で、多少肩透かしをくらった感じ。
確かにサブタイトルには「リスク・リテラシーを磨く」とあるんですが。
「終身雇用制度が日本の高度経済成長を支えてきた」とか「今もそれを維持しようとしているから様々な弊害が現れている」というのは、初めて聞く話ではないしその理屈を頭では理解できるのだが、「終身雇用制度」ってそんなに一般的に浸透し刷り込まれた考え方か?っていうのが、私自身の感覚である。
そもそも父親はずっと自営業者で「終身雇用」みたいな枠とは無縁だったし、私自身も就職を意識し始めた大学生の頃に「終身雇用の崩壊」みたいな話を聞いて初めて「今まではそんなものがあったのか」と知ったくらいの感覚である。
とはいえ、入社する時から「定年まで一生勤めるつもりはない」とずっと思っているけど、10年以上たって未だに一度も転職したことがないという現実は確かにあるんだよね。
終身雇用を望んで過剰な労働に耐えているなんて感覚は全くないのだが、それでも転職しようというのは相当なパワーが要ることだという事は実感している。
私の場合は、SIerの技術者としては会社は大小様々あるし会社を移るだけなら簡単だろうと思う。
他の同じような会社の人たちと同じプロジェクトで仕事することが当たり前になっているから、自分のスキルがどの程度現場で通用するのかは大体わかる。
でも、会社が変わっただけで結局同じような仕事を繰り返していくなら、環境が変わることによる余計な負荷だけが増えて意味がない、とも思っている。
自分のスキルもキャリアもステップアップしていると思えるような変化でなければ意味がないと思いながら、昨今の経済環境の悪化もあってそう簡単には行かないだろうとちょっと躊躇しているような状況かな。
著者はもう相当高いステージに上がっていて「社会を変えよう」という気概が存分に伝わってくるのだが、その分個人レベルでは共感しずらいものになっているような気がしました。
大部分で論じていることはテーマが大きくて、とても個人レベルでどうこうできるような話ではないと思ってしまう人が多いような気がしました。
とはいえ、最終的に「一人一人が少しずつ意識を変えていきましょう」という旨の訴えかけは忘れてはいません。「ちゃんと最後まで読め!」ってことなんです。
P.92
リスクを取れ、とは正確には「計算されたリスクを取れ」という意味です。英語にすると、カリキュレイテッド・リスクになります。
普段、私たちがなぜリスクを取れないかというと、それは計算ができないためです。ところが、取ろうとしているリスクがもたらす損失とリターンの最大と最小がわかっていれば、最大限まずいシナリオになったとして、これくらいの損失であれば自分が許容できる範囲であると決断でき、リスクを取れるようになります。
宝くじにおいてなぜ多くの人がリスクを許容するのかというと、3000円や5000円といったように最大損失が分かっているためです。
これに対して、終身雇用制の枠から抜けて転職のリスクが取れないのはなぜかというと、取った時に起こりうるリスクを計算できないか、計算すること自体が恐ろしいからです。
この「最大損失は何かを考えて自分が許容できる範囲ならそのリスクを取る」というのは、なるほど!と思えた。すごくすっきりしました。
転職の話で言えば、思うようにうまくいかないことがあっても、今と同じような仕事に就けて多少収入は落ちたとしてもそうしてなんとか食っていける、その程度には自分のスキルに自信があるんだったら、やってみたいことにはチャレンジしてみたらいいってことだと思った。
後は一時的に仕事に就けない状態ができたとしても今の蓄えならどれくらいの期間それが許容できるのかをちゃんと把握しておくってことだね。
後先全く考えずに飛び出すこととは違う。それを自分がわかっていればいい、ってことなんだよね。