2009年5月6日水曜日

『IT産業 再生の針路』

日経BP社編集委員の田中克己氏の『IT産業 再生の針路』。
もう2~3ヶ月も前ですが、ちょっと空いた時間に立ち寄った本屋で、なんとなく衝動買いした本でした。

『IT産業 再生の針路』 破壊的イノベーションの時代へ


昨今の状況において、外資系の会社にはほとんど触れず国内の会社に限定した話をすることにどれほど意味があるのか?というのが最初の印象。
まあ、IT業界の関係者だったら、一読くらいしておいてよいものだと思う。
ここに名前が出てくるような大手企業の動向については、就職活動の学生にとってもちょうどよいかも。

大手はなんだかんだ言っても、それなりの独自性が確立できているからこそ、その位置に行けているわけだろうから、参考程度に読んでおけばよいと思う。中の人でも、ここに書いてあるような経営レベルの話はピンと来ていないかもしれないし。

それよりも切実な問題はやっぱりこれなのだろう。中堅・中小がどうしていくべきか。

P.151

中堅・中小ソフト開発会社の有効な生き残り策
  • オフショア開発に取り組む
    コスト削減を図るため、共同でオフショア開発を手掛ける

  • 中国やインドの技術者の採用
    目が輝いている海外技術者を採用し、技術力を高める

  • 下請けから専門特化型会社への転換
    業種、業務、技術などの得意分野を明確にする

  • 持ち株会社の設立
    得意技を持つ中堅・中小ソフト開発会社の企業集団を形成する

  • ユーザー企業との共同開発
    リスクをシェアして、パッケージ・ソフトを開発したり、一体となり新規事業を立ち上げたりする

ただ、これをパッと見て思うのは、同じレベルの話が並んでない、という事。

何をするにもまずは3番目にある「業種、業務、技術などの得意分野を明確にする」というのが必須だろうと思うのだが。これをやった上でその他の策が具体化できるようになるのだと思う。

中堅・中小会社だと総花的に何でもできます、というわけにはいかないから、必ず何かしらあるはずなんだよね。それが市場全体から見て特に優れているわけではないだろうけど、自分の中では比較的「ここはいける」と言えるものがいくつかあるはず。

得意分野を明確にした方が、現場の人間もプロ意識が持ちやすくなるだろうし、内外にとてもわかりやすくなる。

そこで懸念されるのは、「ここがうちの得意分野だ」と宣言する事で、それ以外の分野で以前から手掛けている仕事は傍流だと考えられてしまう事かもしれない。
そういう分野の仕事はすぐにやめられるわけでもないし、やめる必要はない事も多いだろうが、そこに従事する社員のモチベーションをいかに保つかは、それなりに考えないといけない事だと思う。

そうは言ってもやはり「何が得意分野なのか」「これから何に注力していくのか」は会社の方針として明確にすべきだ。
売上や利益の数値目標を立ててそれが達成できるかどうかを追及する事はもちろん大事だが、具体的に何をする事でそれを達成していくのかを明確にしていかないと、現場で頑張るメンバーの方向性を一致させる事ができないと思う。

この「何が得意分野なのか」「これから何に注力していくのか」は毎年見直して数年単位で変えていかなければいけない事だろうから、躊躇するのかもしれない。また、新しいビジネスの話は上のほうの人間の縁で始まる事も多いから、明確にした得意分野と相容れない場合に機会損失する事を気にしているのだろうか。

結局、会社も個人も生き残る為に必要な事は同じだという事だね。
思考停止せずに、自分の強みを捉え、当面注力すべき分野を明確にする、そしてそれらは常に見直し柔軟に方向転換していく事が必要なんだ。

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