これを読むと、開発系の案件のほとんどがERPパッケージがらみだった私は、典型的なSI仕事をやってきたわけではなかったのかと思ってしまう。
SIerにとって“怖い”のはSaaSよりもPaaS:東葛人的視点:ITpro
PaaSはプラットフォーム・アズ・ア・サービス、つまりサービスとしてのアプリケーション開発・実行基盤のこと。
SIerとしては、スクラッチ開発していた部分がSaaSに侵食されると現実の脅威だが、既にERPパッケージに随分侵食されている。ERPパッケージではカスタマイズ・ビジネスが成立したのだから、パッケージ・ソフトの時に比べると儲からないかもしれないが、SaaSでもカスタマイズ・ビジネスをやれるかもしれない。
単なるソフト開発だけなら、正確な意味ではSIではない。システム・インテグレーションは複数のハード、ソフトを組み合わせ、意図した通りに稼働するようにするところにビジネスの本質がある。特にオープン系システムが主流の現在では、SIerの最高の付加価値はIT基盤の構築であり、実際にまともな SIerほど、このIT基盤構築を売り物にしているケースが多い。
ところがPaaSを利用すると、第三者であるPaaSプロバイダがIT基盤を提供することになり、SIerのその面での付加価値は消滅してしまう。つまり、顧客ごとの独自のシステム開発というSIビジネスの本丸の部分に、PaaSは大きな打撃を与える。また、運用・保守といったSIerにとっての別の収益源も、大幅なシュリンクは避けられない。
SIerにとってのERPパッケージの導入案件における儲けの中心は、やはり広い意味でのカスタマイズという形でのアプリ開発だと思うが、「複数のハード、ソフトを組み合わせ、意図した通りに稼働するようにする」という点でSIerの役割はブレていないと思う。ERPパッケージ自体が、システム・インテグレーションとして組み合わせるパーツの一つとして扱われているだけの事だと思う。
私個人の感覚だが、ERPパッケージが普及した大きな要因としては、ERPパッケージが提供するアプリケーション開発・実行基盤が利用できる事があるように思う。ユーザ認証や機能の使用権限などの基本的なセキュリティ面の仕組みや機能の増減に対応していく為のメニューの仕組みなどを毎回スクラッチ開発するなんて無駄だと思う。だからERPパッケージの業務面でギャップが大きくて「アドオンばっかし」になったとしても、ERPパッケージの開発・実行基盤を利用すれば業務アプリの開発に注力できる分、開発プロジェクトとしてはフルスクラッチよりはなんぼかマシなんだと思う。
Oracleはその際たる例で、OracleのAPPS及びEBSがこれだけのシェアを確保できているのは、AOLというアプリケーション開発・実行基盤が充実していて、アドオン機能を簡単にシームレスにパッケージの中に統合できるという事がすごく影響していると思う。要するにSIerにとっての「使えるパーツ」としてうまく使われているおかけだ。パッケージの機能を使って開発が楽になるならその方が好都合。パイは減ったけど「カスタマイズ・ビジネス」でなんとかやっている、なんて感覚は少なくとも現場にはないよね。他のERPパッケージはほとんど知らないのでそこを突っ込まれても何とも言えないが。
もちろん、ユーザ企業側にとっては、そんな使い方がERPパッケージ自体のライセンス料や保守料に見合っているのかは、また少し別の視点で考える必要はあると思うが。それはちょっと話がそれるから置いとく。
というわけで、ERPパッケージも、まともに取り組んできたSIerにとっては、システム・インテグレーションの1パーツでしかないわけだから、それがPaaSになってもパーツが変わるだけの話のような気がする。もちろん一つ一つの案件でどれだけ儲けることができるかっていう基準は変わるかもしれないが。
ところで、大手SIerの下請けに甘んじてきたソフト開発会社にとっては、PaaSは大きなチャンスとなりそうだ。なんせPaaSでは純粋に顧客の業務アプリケーションだけを作ればいいわけだから、顧客の業務を熟知する技術者がキーパーソンになる。大手SIerは実際の開発や運用を下請けに丸投げしているケースも多い。さて、顧客がPaaSを使おうと考えた時、大事にすべきパートナー企業は・・・それはもう自明である。これについては、SaaSとかPaasとか言わなくても既にそういう兆候はあるのかもしれない。
「開発自体を丸投げ」というのは私はあまり見ないけど、プロパーの社員はあまり投入せずに、開発要員はパートナー企業からの調達ばかりで、それでも「がっつり」チャージを乗せた単価を請求するSIerはやはり敬遠したくなるのも仕方ないよね。だったら、実際の開発メンバーが所属していて、かつ、それなりにチーム力も発揮できるような企業と直接やった方がコストかからなくて済むよね、というのは誰でも考えそうな事。実際の開発メンバーが所属する企業にとっては単価を高くできるだろうし、間に入っていたSIerを除けばwin-winの関係が成り立つ。
でも、こういう従来のSIer抜きを実際にやる為のポイントは、プロジェクト・マネジメント力なんだと思う。それって本来はユーザ企業側でできればいい事なのだが、そうもいかない事が多い分SIerにとっては「プロマネ力」がもう一つの売りになっているようにも思える。
実際の開発の主要メンバーが所属するような中規模以下の会社だと、どうしても実際の開発の手を動かしてなんぼって所がある分、「プロマネ力」という点では弱いケースが多いよね、と思う。
SIer抜きをやるには、ユーザ企業自身がプロマネ力を磨き発揮する覚悟が必要だと思う。
まあ、そこだけ開発とは別でアウトソースというのも、ありかもしれないが。
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