2010年12月12日日曜日

SIerが人月商売から脱却するのはやっぱり難しい

これはもう散々言われてきた事で、今さら私が言うような事でもないわけですが、自分の実感として改めて思う所があったので、まとめておこうかと思いまして。

SIerが人月商売から脱却する為に、様々な策をいろんな人がいろんな所で語っているよう。
それで大体は、サービス化とかSaas化みたいな話になりがちなわけで、方向性の一つとしてそれはそれでいいとは思う。

ただ、顧客への請求を人月ベースに依拠しないビジネスモデルを探るにしても、そもそも「価格」ってどういうふうにしたら決められるのかって事を考えないといけないと思う。

当たり前の話ではあるが、一般的にモノやサービスの価格は、そのコストと顧客価値の間に適当な落とし所を見つけて決まることになる。

 コスト ≦ 価格 ≦ 顧客価値

コストは厳密には「見積コスト」という事になるのだろう。
見積コストを下回る価格は赤字確実なわけで、ビジネスとして継続できないし、ある意味で利益供与になってしまう。また、顧客が見出す価値を超えた高値では売れるわけない。

別の手段で回収する方法があるなら、それらも含めたビジネスモデルとして考えるべき話である。

で、人月商売とは結局このコストベースの価格決定方法だけにロックされてしまっているって言う事なんだよね。
これは単純にSIerだけの問題でもなくて、顧客企業側もほとんどのシステム投資は「コスト」としか見れないから、最もわかりやすいしリーズナブルなわけだ。
SIerは人月商売から脱却したくても、顧客側はそう簡単には納得しないよね。
かかるコスト(とSIerの適正な利潤)を超える金額を払うという事になるわけなんで。

また、顧客への課金方法がどうなろうとも、内部的な人件費コストはやっぱり人月で見積もるしかないわけで、だから単純に人月の考え方自体を否定するのはちょっと違うと思うわけです。

つまる所、SIerはそのシステム投資の「顧客価値」が見積もれないので、コストベースで積み上げた金額しか提示できないわけですね。金額の根拠を説明するのもコストの話がわかりやすいし合意も得られやすい。
それは顧客側もほとんど似たような話だと思うわけで、本当にそのシステム投資の価値が見積もれているのかというのは結構疑問。
「とりあえず予算がこうだから、この範囲でやるしかない」というのも一つの価値基準ではあるけど、本当ならそのシステム投資によってもたらされる生産性の向上や収益機会の拡大によって得られるはずの「キャッシュフロー」から投資予算も決められるわけなんだけどね。

かなり大きな企業なら程度の差はあっても何らかその手の根拠を持って投資予算は決めるのだろうけど、実際そういう段階の話に関わった事はないんでよくわからない。
また、予算はそういうふうに決めていたとしても、SIerへの発注をどうするのかはまた別の話だしね。

というわけで、あまりまとまっていませんが、顧客への課金方法は色々手を打ったとしても、内部のコスト計画上で人月の考え方は外せないわけで、収益ベースとコストベースが直接リンクしないところをいかに折り合いを付けてビジネスモデルを作るかっていう、他の産業だったら普通にやってそうな事をやる必要があるよという話だね。

さらにSIerにとってはシステム投資の顧客価値をいかに見極めていくかというのが大きなテーマとしてあって、さらにその範囲内でできるだけ「高く売る」にはどうしたらいいかを考えていく必要があるよね。顧客のシステム投資に対する意識を変えていけるような提案が必要なわけです。
一般的なレベルの話では、やっぱり蓄積したノウハウを結集して何がしかのテンプレート化、パッケージ化、サービス化をするって話なんだろうなぁ。
その「何がしか」をどう見極めるかが問題なわけだし、今まで普通に受託開発だけやってきた会社にそう簡単にできる事じゃないのだろうけどね。

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